薬剤師として現場に出ると、教科書では学べなかった課題や戸惑いに直面することが少なくありません。専門職としての責任の重さや、患者との関係づくり、チーム内での立ち回りなど、業務をこなすだけでは乗り越えられない壁にぶつかる瞬間があります。こうしたつまずきを乗り越えることで、専門職としての視野と自信が広がっていきます。この記事では、薬剤師が現場で経験しがちなつまずきと、その乗り越え方について具体的に紹介します。
実務では処方内容の背景や患者の病態を深く読み取る力が求められますが、経験が浅いうちは情報の少なさに戸惑うこともあります。たとえば、薬の使い方に違和感があるが確信が持てず、確認をためらった結果ミス寸前だった、というケースは多くの新人が通る道です。
このようなときこそ、上司や先輩に相談し、なぜそう処方されているのかを共有する機会に変えることが成長につながります。疑問を持つ姿勢は決して恥ずかしいことではなく、安全を守るための第一歩です。
患者からの質問にうまく答えられなかったり、説明に納得してもらえなかった経験は、強く印象に残るものです。特に初対面での高齢者やクレーム気味の対応に対して緊張してしまい、言葉が詰まった経験は誰にでも起こりうることです。
そんなときは、振り返りと先輩への相談を通じて、どの言葉が相手に届きやすかったのか、どの部分で理解を得られなかったのかを分析することが回復のきっかけになります。コミュニケーションは繰り返すことで磨かれるスキルであり、失敗の経験もすべて自分の財産になります。
業務が忙しくなると、自分のことで精一杯になり、周囲との情報共有が疎かになりがちです。結果として、チームメンバーとの連携がうまくいかず、報告や相談のタイミングを逃して孤立してしまうことがあります。
この状況を乗り越えるためには、自ら声をかける勇気と、相手の状況にも目を向ける視野の広さが求められます。「共有することで助け合える」という意識を持つことで、徐々に信頼関係も構築されていきます。
人間関係の構築も仕事の一部と捉え、日々少しずつでも関係性を深めていく努力が、働きやすい環境づくりにつながるのです。